Anou

東京で働くバツイチ40代男性のひとり暮らし(たまにふたり)とかいろいろ。

【微ネタバレ】何故、呪術廻戦0はこんなにも面白いのか?(外堀的なお話)

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観ればわかる。

で、終了してしまう話なのですが、90年代からアニメを見続けて来た古のオタクとして、頼まれもしないのに考察してみます。物語の直接的な内容ではなく、外堀的なお話ですので具体的なネタバレはありませんが、ところどころアレなので、未見の方は映画を観覧後にどうぞ。

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往年のアニメ映画における王道感

一緒に戦う仲間が全員やられてしまい、物語の終盤で、主人公が怒りと共にこれまでにない力を発揮し、悪役を倒す!という爽快感を伴う伝統芸。わかってはいるけれど、気持ち良い。水戸黄門的な脚本の黄金率とでも言いましょうか。これです、これが見たかったんです。ドラゴンボールの劇場版よろしく、主人公側の登場人物はテレビ本編でキャラが描かれているため説明要素が無くて済む、というメリット。かつ、テレビ版とは少し違うデザイン(今回で言うとTV本編より前年の設定)という程よい新鮮さも併せ持つという巧みさがありました。ドラえもんの映画も、テレビ本編とは衣装やキャラ設定が微妙に異なることで、劇場版らしさ、ちょっとしたお祭り感、パラレルワールド感があって楽しかったアレです。(わかる人にだけわかる)

 

芥見下々氏の構成力と、映画脚本家のサービス心のコラボ

原作は非常にシンプルなお話でした。ベテラン作家であれば様々な要素を加えていたことでしょう。しかし、原作の執筆当時、芥見氏が若かったこともあってか、風呂敷を広げ過ぎることはありませんでした(未考証、未設定もあったのかもしれませんが)。ジャンプの単行本1冊にまとまるという、腹八分目的な程よいボリューム。その後の本編との整合性が取れてしまっているところに、芥見氏の想像力の豊かさ、底恐ろしさを感じます。その分、映画の脚本家は「どこまで、何を、どこに、どのように足すか?」という課題と向き合う難しさがあったと推察します。パンフレットにも一部、それに関する話がありますので、気になる方はそちらをご覧ください。とても読み応えありましたのでオススメです。ともあれ、60分程にまとまるボリュームであった原作は、ファンサービスを込めた追加要素や、映画における主人公の内面を深く掘り下げる描写を併せ持って、一つの映画として結実しました。結果的に、初めての視聴者にも見やすく、呪術廻戦を好きな人が未見の友達と一緒に行く、というスタイルが可能となりました。

 

アクション満載のバトル映画と思いきや

最後は純愛映画でした。いやー締まりました、それはもう、締まりましたね。ただ、そこは呪術廻戦ですので、ホラーというか、おどろおどろしいビジュアルを伴うのですが、単なる気持ち悪さだけを求めた作品では決して持ち得ない感動に辿り着くことが出来る傑作でした。パンダの描写が足りなかったことには意義を唱えたい気持ちがありますが、真希さんの描写はほっこりしました、そして世代的にもルーズソックスはアレです、ありがとうございました。棘はこんなにもジャンプ漫画王道のキャラクターだったのか、と改めて好きになりました。同性ですが愛でたいキャラです、とりあえず一緒にコンビニ行かない?折本里香は、原作と映画でキャラ設定がやや異なる印象がありました。おや?とは思いましたが、やり過ぎると一つの映画にまとまらない気もするので、良い調整なのかも知れません。気になる方は原作漫画をご覧ください。なお純愛映画と冒頭で書きましたが、もちろんバトル映画としても秀逸でした。アクションシーンは本当に素晴らしく、格闘、夜戦、空中戦、武具、ビームなどなど、本当にご馳走様でした。

 

2021年は緒方恵美さんの年だった

身も心も鬱屈している私たちオタクは、やはりこの人無しにアニメを見ることはできないのではないか、ということを歪んだ骨身に染みるまで痛感させられた年でした。蔵馬を演じていた頃の素朴、朴訥なトーンの緒方氏も魅力的でしたが、現在は円熟の域に達していらっしゃる感があります。偉大な声優さんです。芥見氏のキャスティングだったと言うことですが、氏は本当にエヴァ大好きなんだな。アニメでのロボ丸の活躍にも期待大です。シンジくん、良かったね、呪術高専でやりたいことが見つかって。

 

制作会社:mappa

2011年設立のアニメ制作会社。坂道のアポロンを見た時の感動はいまだに覚えていますが、まだ10年程の会社なんですね。その後も「うしおととら」、「ユーリ」、「いぬやしき」、「どろろ」など良作を継続して生み出してきたスタジオです。個人的には、庵野秀明監督の「カレカノ」や「エヴァ」で知られる平松さんが同社の所属になった波及効果として若いスタッフへ与えた影響も大きかったのでは、と思っています。2020年は呪術廻戦と進撃の巨人を同時制作する時期もあり、日本を代表するアニメ制作スタジオとなった感があります。呪術廻戦0は予告でも見られるアクションシーンはもちろん、帳の中の世界観や乙骨の成長を描く描写など、細かい点のクオリティがことごとく秀逸でした。パンフレットで主要シーンの原画が掲載されていましたが、眼福です。これが動くなんて、、、。

 

主題歌:King Gnu

作詞作曲を担当した常田氏は昨年、王様ランキングや竜とそばかすの姫等に楽曲提供を行いました。そのどれもが原作に対する理解が深く、その上で自身の創作性を発揮し、大衆の人気を獲得するという、素晴らしい成果を残しています。私も大ファンですが、最早、恐ろしくすら感じます。常田氏は何かの番組で、「呪術廻戦の映画を表現するのに、1曲では足りなかった。」というコメントともに逆夢の曲を紹介されていました。完全な想像ですが、当初は「一途」のみの提供で、「逆夢」は映画制作サイドではなく、King Gnu側の提案だったのかなと。「依頼されたから」だけではなく、「アニメの制作スタッフと同じ方向を向いて、音楽を創る」というスタンスなのではないでしょうか、素晴らしい以外の言葉がありません。

 

制作側の思い

かつて、進撃の巨人がアニメで大人気になった時、前後編で映画化をしたことがありました。新作カットなどは追加されるものの、オタクとしては今ひとつ「観に行こう!」とは成りにくかった記憶があります。どうにも、映画制作側の「ブームを利用した泡の手的な何か」を感じてしまうのです。いや進撃も素晴らしいアニメなのですが。今回の呪術にも、そうした一面が完全に無かったかと言われれば違いますが、それでも「0」となる原作の映画化に着手した点は「漫画原作に対する敬意や愛情」の一端が感じられる気がします。ここまで書いておいて、我ながら根拠が薄いな、と思うのですが、それでも「なんとなくそう感ずる」としか言えない部分でもあります。答えは多分、劇場にに行けばわかります(かっこいい)。

jujutsukaisen-movie.jp

 

まとめ

なんやかんや長文になりましたが、7本の柱に分けて書いてみました。こうしていると「もう一回、劇場で観ておこう。」という気持ちに。来週にでも行こうかな。本編はまだ続くようですし、TVアニメも控えているしで、しばらく楽しませて頂けそうな傑作。芥見氏やアニメの制作スタッフの皆様に感謝です。