10月スタートの「機動戦士ガンダム 水星の魔女」第1話を観ました。なんだこれは。最高でした。
(画像は公式サイトより)
まず、物語のテンポが良い。
・3分半でオープニング終了
・7分半で最初のバトルシーン
・1話内で2度のバトルシーン
プロローグの0話とは全くスピード感の異なる構成。ただ短いだけではなく、各パートの抑揚がきちんと練られています。
たった1話の中で完了したエピソードがこちら。
・主人公とヒロインの出会い(ユニコーンガンダムへのオマージュ)
・学園ものの定番、転校生(編入生)による鮮烈デビュー(枚挙にいとまなし)
・主人公の複座な生い立ちの匂わせ(ありがとう、ガンダムです)
・仲間(になるであろう)のキャラクター描写(多め、ありがとう)
・バトルもの(決闘)であることの周知(キミに決めた!)
・組織内の抗争(ありがとう、ガンダムです)
・ファンネル無双(ありがとう、ガンダムです)
・囚われの姫を助ける王子様(嫌いな人、います?)
・バディ(カップル?)成立(嫌いな人、います?!)
・百合(新鮮)
(画像は公式サイトより)
温室で決闘を申し込み、お姫様を助ける一連の流れは「少女革命ウテナ」のそれである、というのは既にあちこちで指摘されている意見に同意です。幾原監督、見てるでしょうか。あなたの名作が古典となり、次世代に受け継がれていくようです。
映像的には、ビームエフェクト、決闘を行うエリアの結界描写、ファンネルの動きと軌道の美しさなど、意欲的な表現も随所に見られたのが良かったですね。3Dによる描写の秀逸さと撮影技術の著しい向上が、これまでに見たことのないガンダムのバトルを見せてくれそうです。
他にも
・声優さんのキャスティングが素晴らしい
・音楽が素晴らしい
など、挙げればきりがありません。このまま最終話まで息切れせずに、突っ走ってもらいたいものです。期待。
そして最も印象に残ったのは、主人公の決め台詞。
「逃げたら1つ、進めば2つ」
「逃げたら、負けない、が手に入る。進めば手に入ります、経験値もプライドも。信頼だって。」このセリフから、新世代の感覚に触れられた気がします。
(画像は公式サイトより)
私のような90年代のアニメで育った古のオタクとしては「逃げちゃダメだ。」なんですよね。00年代は何でしょうか。10年代は「駆逐してやる。」でしょうか。これまでの主人公は不当に追い込まれ、時には逃げながらも、自分の内や外の敵と向かい合い、戦うことで成長し、物語を紡いできました。
しかし、本作での主人公の向き合い方は、これまでとは少し違う気がします。冷静に「逃げる」ことを選択肢の一つとして捉えつつ、「進めば2つ」という大きな結果を望もう、賭けに出よう、という大胆さを内に秘めています。
これまでのガンダムにおける主人公の精神的なベースが「内向的」であったのに対して、本作の主人公、スレッタ・マーキュリーは「内向的な衣を纏った外向的」なキャラクターなのかも知れません。第1話で決闘へと至る理由は、「かわいそうなお姫様を助ける」ということよりも「責任を果たす」という点が上位であったように描かれていました。自分の世界のみに生きるキャラクターには持ち得にくい思考です。アムロやバナージが物語の中盤以降に抱くようになった思考を、スレッタ・マーキュリーという本作の主人公は既に自らの軸としているのです。この設定が爽快で良いすね。入学は「お母さんに言われたから」という理由ですが、そこにも何か一つ、仕掛けがあるような気がしています。知らんけど。
何が言いたかったかというと、本作【機動戦士ガンダム 水星の魔女】は、ガンダムのセオリーとなる要素をきちんと踏まえつつ、新しい着地点に連れて行ってくれる期待感に満ちている、ということです。これは、オルフェンズには無かった感覚。(オルフェンズもとても面白かったです、1stシーズンは。)レコンギスタは、新しい装いでゴリゴリの「ガンダム」をパッケージしてくれた良作でしたが、結末は予想を超えるものではありませんでした。(それが良いんですけども)閃光のハサウェイは、潤沢な予算でガンダムオタクが見たかった映像を見せてくれるお祭り。(最&高)まさか令和の時代にもなって、こんなに沢山の素晴らしいガンダムワールドを楽しめるとは思っていませんでした。ありがたや。
という訳で、2話目が楽しみです。学園もののエピソードは、案外早く卒業するような気がします。先週まで学校でワチャワチャしていたのに、今は戦場で殺し合うなんて、、、という展開が目に浮かびます。それから、普通に想像すると、父の仇討ちが物語の大きな軸になると思うのですが。0話でお父さんが死んでしまったので、本作はガンダムの定番「父と息子の物語」ではなく、「母と娘の物語」になるのでしょうか。新鮮ですね。父を死に追いやった勢力のお姫様と結ばれた捻れが、物語中盤以降にどう演出されるのか、楽しみです。男性のウジウジした感じは嘲笑の的となりがちですが、女性のドロドロした戦いは、それはそれで恐ろしいのかも知れません。0話の悲惨さを作ったスタッフなら、物語のラストで母vs娘の修羅場を作りかねない、という淡い期待(?)もあります。
すでに、本作は2シーズンが放映されることがアナウンスされています。どんな結末を迎えるのでしょうか。2022年秋アニメは豊作過ぎますね。
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