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東京で働くバツイチ40代男性のひとり暮らし(たまにふたり)とかいろいろ。

【機動戦士ガンダム 水星の魔女】第14話「彼女たちのネガイ」考察①

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情報量がモリモリのため、30分の放送時間があっという間に過ぎ去る「水星の魔女」。第2期の2話目(第14話)は、これまでの伏線のいくつかが改修されつつ、主要人物(と思われていた)や学生の死亡など、物語として大きく進んだ印象の強い放送回でした。タイトルは「彼女のネガイ」。プロスペラやニカ姉、ソフィーらの願いが複雑に織り込まれつつ、ガンダムらしい世界観が描かれたエピソードでした。これら3人のキャラの「ネガイ」を軸に、第14話を紐解いてみたいと思います。

*画像は全て公式サイト&snsより

-目次-

 

 

 

1. プロスペラのネガイ

1-1. クワイエット・ゼロ

第13話で新たに判明した内容はこちら。

 

発案者はノートレット・レンブラン(ミオリネ母)

衝撃の新事実。これまで、ミオリネ母については「幼いミオリネを残して死亡」、「亡くなったタイミングからデリングが豹変」、「トマトの品種研究を行う」、「地球に何らかの縁がある」という程度しか情報がありません。しかし今回のプロスペラの発言により、ミオリネ母がクワイエット・ゼロの発案者であることが判明しました。そうすると、ミオリネ母の死因もガンド技術に関する(あるいは前身となる技術?)可能性が浮上します。「ガンダムの呪いは深い」と語ったデリングのセリフがありましたが、それは他でもないノートレットが亡くなった理由が関係しているから、なのかも知れません。
本編中のクワイエット・ゼロについては、たびたびコロニー奥にある施設?のような建造物の描写がありました。もしかすると、ミオリネ母の意識、生体情報がそこに眠っているのかも知れません。そう考えると、エリクトを復活させたいプロスペラと目的が合致する可能性があります。

 

 

データストームは人間には害となるが、超密度情報体系を発現できる

短い秒数で、大量の新事実が開示されました。シャディク戦でエアリアルが見せた多角形の空間は、「超密度情報体系」が視覚化されたものだったようです。

 

 

超密度情報体系とは、データストームを利用してパーメットリンクを介したあらゆるシステムを制御する新機軸のネットワーク構成

データストームは人間にとってのデメリットばかりが描かれてきましたが、そもそもは情報の相互流通現象。人間の体には害となるが、意思疎通においては現人類が成しえない次元でコミュニケーションすることができる、ということなのでしょうか。(デメリットの強いニュータイプという感じ?)
ひとつ気になるのは「異なる情報システムが併存する場合、何によって上位システムが決定されるのか」という点です。「超密度情報体系」という言葉からは「横の連携」が想起されます。しかし、プロスペラの言い方からすると「任意のシステムによる上書きが前提である」というニュアンスが含まれています。

 

 

エアリアルはそのためのトリガーとなる

やめてくれませんかね、「トリガー」とか。エヴァンゲリオン風味が強すぎです(嬉しい)。「エアリアルの中に組み込まれた人間=エリクトとスレッタが何らかの理由でリンクすることで、逆流無しに超密度情報体系にアクセスできる」ということでしょうか。これまで描かれたパーメットスコア上昇によるパイロット技術の向上は、戦闘空間における高度な情報体系(周囲認識と行動予測)へのアクセスであった、ということが改めて明示されたわけでもあります。
クワイエットゼロ」とは計画の名前であり、それを果たすための手段が「ガンド技術」。そのきっかけを生み出すことができるのが「スレッタとエアリアルのコンビネーション」、という構造です。「人類補完計画」、「エヴァンゲリオン」、「仕組まれた子供たち」という置き換えができるので、まんまエヴァンゲリオンのオマージュですね(嬉しい)。

 

 

 

1-2. デリングへ忍び寄る影

クワイエット・ゼロに賛成、協力

プロスペラは、クワイエット・ゼロの進行にはデリングの独裁力(総合力)が必要だと捉えているようです。自分の恩師や夫を亡き者にした仇であるという認識は持ちつつ、ビジネスパートナーとして一定の信頼を置いている様なニュアンスの語り口でした。(能登さんの演技、素晴らしいですね)OPでデリングとプロスペラが2人で映っているカットがありますが、第1期で描かれた2人のラスボス感は薄まりつつあります。もっとヤバイ展開になるということでしょうか。怖い。

 

 

スレッタを学園に編入させ、エアリアルを開発

アスティカシア学園はエアリアルの最適化にベストな環境だったようです。たしかに火星の劣悪な環境下ではスレッタどころか、エアリアルすら失う可能性が大。

 

 

1-3. これまでの時系列を考察

火星でMSの開発(=後のエアリアル
 ↓
初期型の中にエリクトが残存する可能性を発見
 ↓
スレッタの誕生
 ↓
エリクトのサルベージを試みるが不発
 ↓
デリングのクワイエットゼロ計画を知る
 ↓
自己の目的(エリクト再生)のため、クワイエットゼロを利用することを発案
 ↓
スレッタとエアリアルをアステカシア学園に編入させる
 ↓
ガンダムとして注目させて、デリングとの対面を模索(=決闘システムの利用)
 ↓
デリングとの関係性を深める(=株式会社ガンダムの利用)
 ↓
クワイエットゼロに有益なデータ提供(対シャディク戦のデータ提供)
 ↓
プラントクエタ事変が発生

 

こうして考えると「第2話のシンセー糾弾はガチだった」、「第11話でデリングとプロスペラが会うのはガチで初めてだった」となり、各エピソードでの疑問が回収される気がします。

 

 

プラント襲撃事件はプロスペラにとっても想定外(悔しい)

プロローグでは「プロスペラは度々、地球を訪れている」という描写がありました。つまりプロスペラはフォルドの夜明けやソフィ―らの存在も、直接もしくは間接で知っている、と予想していたのですが…、どうやらそうではなかいようです。となると、プロスペラが通じていたのはレジスタンス組織ではなく、地球連合の方、、、?!もやもや。謎が残ります。そもそも、学園の決闘に置いてエアリアル改修型はオーバースペックすぎます。プロスペラが決闘のためだけに開発しているとは思えないんですよね。

 

 

 


1-4. スレッタへの愛情について

「学校に行きたい」というスレッタの夢を叶える側面もあった

とって付けたようなセリフでびっくりしました。「決闘なら死ぬ可能性はなかった。」、とサラリと言っていますが、、、。改めて、本作において「プロスペラは一定の距離を置いた愛情をスレッタに向けている」という描写が徹底されています。考えたくないことではありますが、おそらく「プロスペラにとって、スレッタは1番かわいい、愛している存在ではない」ということだと予想されます。では誰が1番かと言えば、やはり「エアリアルの中に居るエリクト」ということになるのでしょうか。

 

 

 

 

1-5. 密談

プロスペラ「エアリアルの正体?」
ベルメリア「エアリアルは11機のガンビットで、空間そのものを掌握していました。データストームを利用して。なのにスレッタはデータストームの影響を受けていない。まるで他の誰かが、ガンビットを操っているよう。」
「はっきり口に出したらどう?」
「あなたにはもう一人、娘さんがいましたよね?エリクトサマヤは今、どこにいるんですか?」
プ「いるわよ、スレッタのすぐそばに。データストームのその先で、わたしたちを待っている(子供たちの声)。」
「そんな、、、人間がMSに、、、」
プ「あの子は新しい体を手に入れた、喜んで、エリーこそが私たちが目指すガンドの未来よ。」
クワイエット、ゼロ?」
プ「ガンドフォーマットで戦いや争いを排除する、素敵でしょ?」
「本当の目的を言ってください。総裁の計画だけなら、あそこまでのスコアは必要ないはずです。」
プ「世界を書き換えたいの、エリーが幸せになるために。」

 

 

 

 

1-6. まとめ+考察

エアリアルの中にエリクトが組み込まれている」これは、これまで多くの人が考察してきた通りの内容でした。
エリクトは「データの海に思念体として残留」しているようです。エアリアルがなければ、他者とコンタクトできない孤独な世界。望んで進んだわけではない世界。戦争がなければ、行かずに済んだ世界。そんな中に存在するエリクトを幸せにするためには、世界をひっくり返して、みんながあちらの世界に行けばいい。戦いや争いが無い世界、素敵でしょ?ということでしょうか。(まんま人類補完計画ですね、、、)
プロスペラは「エリーこそが私たちの目指すガンドの未来」と語りました。しかし、本当にそうなのでしょうか?エリクトがエアリアル?AI?と同化した経緯がわかっていません。幼い子供が自らの意思で進んで同化するとは思えないのですが、、、。いつか、顕現したエリクトと現在のプロスペラが出会ったとして、OPにあったような幸せな距離感の親子に戻れるのでしょうか。エリクトはどう思っているんだろう。
長くなってしまいましたが、第14話にして明らかになったプロスペラの「ネガイ」の全容。とは言え、まだ語られていないこともありそう。今後の仮面ママの活躍に期待です。

 

 

 

 

2. ニカのネガイ

2-1. ニカと地球寮メンバー

第13話でのソフィ&ノレアとニカ&スレッタの小競り合いについては、「ファラクトの調整中に事故った」ということになったようです。ひとまず、ニカの希望通り、地球寮メンバーに危険は及ばないことになりました。ですが、あまりにも不穏な話であることや、学園祭の期間にニカと連絡が一切取れなくなってしまったことから、地球寮メンバーはニカに対して暗澹たる気持ちを抱くようになってしまいました。

 

 

2-2. ニカとスレッタ

そんなニカに唯一、直接的に「助けたい」と声をかけてくれるスレッタ。語られるニカの幼少期。地球で孤児として壮絶な時間を過ごしたことが語られます。そして学校へ通うことへの強い憧れを持っていたことも。

「スレッタが初めて学校に通うと聞いて、自分と同じだと思った。」

ニカはスレッタに自分を重ね、スレッタを助けることで、かつての自分自身を救いたいと考えたようです。だからこそ、スレッタに危険が及ばないよう、自分が一人でケジメをつける道を選ぶのでしょう。悲しい別離。

 

 

2-3. 戦争による分断の縮図

「地球寮メンバーとニカの分断」、それは大人たちが作り出した「アーシアンスペーシアンの分断」が元凶であることが描かれています。この一連の会話劇は「学園&百合モノ」というキャッチーな側面を持ちつつも、「戦争」が題材の一つであることを視聴者に突きつけたように感じました。(これぞガンダム、、、)

「スレッタは学校、楽しまなきゃだめだよ。」

憧れだった学園で出会った友人の幸せをネガイ、目線を合わせることなく、スレッタの元を去ってしまうニカ。第14話も、相変わらずの高密度なストーリー展開です。

 

 

 

 

3. ソフィーのネガイ

 

3-1. 安定のサイコパス

「困ってたんでしょ、気持ち悪いよねぇ、あいつ」

「エランさんは気持ち悪くなんか、、、」

「決めたよ!決闘にかけるもの!アタシが買ったら、本物のお姉ちゃんになってよ!

「本物?」

「そ、アタシたち本物の家族になるの!そしたらあいつも殺さないでいてあげる」

「ごめんなさい、私、お嫁さんがいますから」

(中略)

「そっか、ミオリネがお姉ちゃんを閉じ込めてんだね」

「ミオリネ殺したら、あの時のお姉ちゃんにまた会えるかな?!」

「どういう?」

「決闘、楽しみにしてるね!!」


これまでソフィーの「暴力性」「幼稚性」「激情的な感情」「高い身体能力」などが描かれてきた訳ですが、上記のパートでは「目的に最短で到達するための偏った思考性」が加わりました。キャラクターを構成する要素を整理すると、悲しいかな、立派なテロリストです。そして伝統的なことに、いわゆるガンダムにおける「妹キャラの強化人間」としての要素を網羅しています。第1期では「ガンダムらしさ」の表現が控え目でしたが、第2期に入ってからは強めに「ガンダムらしさ」が出てきています。
「閉じ込めてんだね」というソフィーの発言からは、「地球の子どもが大人に虐げられている」という状況を読み取ることもできます。子は親の背中を見て育つ。ソフィの周囲にいる大人たちも同じように、暴力で解決を図ってきたのでしょう。ガンダムという軍事的なツール、政治的に影響を及ぼす兵器を操るパイロットでありながら、その精神年齢自体は幼く、純粋である点が悲哀を高めます。

 

 

3-2. パーメットスコア6

「ほらほら、お姉ちゃんの望んだ決闘だよ!モビルスーツに乗ったら人は死ぬ!学校で習わなかったの!」

「なんでガンダムで酷いことを?!」

「ほしいものがあるからだよ!!!お腹いっぱいのご飯!ふかふかの寝床!暖かいシャワー!まだまだあるよ、コミック、ゲーム、それと!あたしを好きでいてくれる家族!!』

「おかしいです、人を殺してまで!そんなの!」

(ハエ叩きのフラッシュバック)

「スレッタお姉ちゃんにはあるんでしょ、ほしいもの!そして花嫁?!ミオリネって女?そいつのために人殺しの道具に乗ってるわけ?」

エアリアルは人殺しの道具じゃありません!」

「じゃあなんでエアリアルは武器持ってるの?誰が暴力マシンを作ったの?」

エアリアルはお母さんが、お母さんが、何のために、、、?」

(被弾するエアリアル

「決闘はあたしの勝ち、ミオリネも学校もみんな壊す!家族にしてあげるね、お姉ちゃん!」



MSの操縦技量とパイロットの精神としても、ソフィーに圧倒されるスレッタ。防戦一方の展開となってしまい、改修型のバックパックも被弾してしまいます。さらに、ソフィーの発言によって母親への疑問を持ってしまったスレッタ。その後、パーメットスコア6を発動。しかし、迫り来るソフィーに対応するようにエアリアルが自らの意志でルブリス・ウルに反撃。

 

(悲鳴をあげるソフィ

オーバーライドされていくガンヴォルヴァたち(初登場なのに

「そっか、そうだったんだ!」

 

エアリアルに誘われるように、青く光るガンダムルブリス・ウル

機体は青く光り、パーメットスコア6を発動

「聞こえる、感じる、あの時のときめき!アタシを殺そうとする綺麗な声!」

「止まって!エアリアル!」

「スレッタぁ!あんたじゃない!」

「はぁ!はぁ!あたしが!欲しかったのは!!」

「やめテェぇえ!!」

 

エアリアルに伸ばしたガンダムルブリス・ウルの手が力を失い、だらりと垂れる

(動作停止

 

「ソフィーさん!」(固まって動かない

「気に病む必要はありませんよ。あなたが殺す前に、ソフィーは殺された」

「アタシもいつかきっとガンダムの呪いに殺されます(震え」

「殺されないあなたは、何者なんですか?」

 

 

3-3. 最期

ガンダムではこれまで、多数の強化人間が描かれてきました。その中で、主人公を兄としたう妹キャラも多かったわけです。フォウ・ムラサメZガンダム)やエルピー・プルZZガンダム)など。いずれも物語の中で死亡してしまうので、スレッタをお姉ちゃん呼ばわりするソフィーもまた、、、と予想していたものの、こんなに早い退場を迎えてしまうとは思いませんでした。キツイ。

ソフィーはどうやら、以前からエアリアルの中のエリクトの存在を感じていたようです。彼女がハートを射抜かれてしまった相手はスレッタではなく、エリクト。ソフィーにとってのエリクトは、絶対的な力と綺麗な声を持った存在であるようです。彼女が願って手に入れたいと思った物を掴むために必要なのは、強大な力。だからこそ、スレッタではなくエリクトに憧れ、彼女の力を欲しいと願ったのでしょう。しかしそれは「ガンダムの呪い=死」を代償とする願いでもあったために、ソフィーは命を落としてしまいます。水星の魔女の世界における「力」の恐ろしさを現したエピソードとなりました。

「本物のお姉ちゃんになってよ!」

幼稚で、狂気を纏った暴力的なソフィーの願いですが、彼女の生い立ちの裏側に透けて見える背景を考えると、なんとも。(これぞガンダム、、、)

 

 

 

4. 「彼女たちのネガイ」まとめ

戦争の犠牲となり、MSの中に閉じ込められてしまった娘を救いたいと願うプロスペラ。自分の運命に抗い、学園で得た友人を守りたいと願うニカ。欲しいものを得るために強い力を得ることを願うソフィー。主要登場人物は全て女性。かつて、ここまで女性キャラが活躍しまくるガンダムはありませんでしたが、とても良いですね。新しいシリーズを生み出そうと燃えるスタッフの気概が感じられます。良いエピソードだっただけに、ソフィーの退場は本当に残念。あのラストからすると、次は回収修理されたルブリス・ウルに再調整されたニカが搭乗してスレッタと戦うのでしょうか、、、怖い。そうそう、他にもペトラのネガイもありましたね、ラウダさんは生き残ることができるのでしょうか。来週も楽しみです。