2023年秋アニメは大豊作ですね。
呪術廻戦、進撃の巨人 The Final Season 完結編 後編、オチビサン、薬屋のひとりごと、SPY×FAMILY Season2、地球外少年少女、魔法使いの嫁 SEASON2 第2クール。配信系も充実しており、火の鳥 エデンの宙(ディズニープラス)、PLUTOと悪魔くん(NETFLIX)など目白押し。
もう傑作が盛りだくさん。良い時代になったな、、、と思う古の元オタクです。そんな中でも群を抜いていると感ずるのが、「葬送のフリーレン」。日テレが気合を入れて放映開始したので、若干懐疑的だったのですが、申し訳ありませんでした。大傑作です。なぜこんなに面白いのか?と言うことが気になったので、拙い文章ですが思いのままに言語化してみようと思います。
*画像は公式サイトより
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ここが凄いよアニメ「葬送のフリーレン」
*画像は公式サイトより
何気ない日常や動作を表現するアニメーションが、凄い
第2話でフリーレンが落ち葉をくるくると回すアクションがありました。主観のカットで、ごく自然に手元を眺めているシーンだったのですが、これに度肝を抜かれました。正直、エピソード上で重要な意味を持つシーンではありません。強いて言えば「世界観を視聴者に感じさせる」と言うところでしょうか。しかし、この「何気なく落ち葉をくるくると回す」と言う動作は、アニメーションに対するカロリー(作画のコスト)が非常に高い動作です。人間と落ち葉そのものに対するデッサン力が求めらるのでハードルが高い。また、多くの視聴者にとっては「特別なことではない」ために、印象に残りにくいと言う負の側面もあります。私が制作サイドなら「え?このシーン動かさなくて良いでしょ?」と言ってしまいそうです。しかし「葬送のフリーレン」のスタッフは、この僅かなシーンに「これが葬送のフリーレンのアニメですよ」と言う決意を滲ませていたのではないかと思います。
「手に取った落ち葉を回す」=「当たり前の日常」を何気なく表現していくという、大変な作業をサラッとやってみせる。細かいながらも、キャラクターと世界観を表現する重要な要素です。フリーレンが存在する空想の世界を、視聴者の世界の続きとして感じられるようなアクション。素晴らしい。
ちなみに、こんなことを書いていると、第10話で「シュタルク様が上着を着る」と言う、これまた「実写であれば普通で、なんてことはないはずのアクション」をアニメーションで丁寧に描写していました。これはシュタルクが魔族の討伐に向けて、自らを奮い立たせるアクションの一つであり、同時に、葬送のフリーレンのスタッフが「ゴリゴリにやってやるぜ」と言う意思表示の一つだと感じました。声優さんの豪華さや音楽の豪華さなどが目につきがちですが、アニメーションとしての基礎的な中身が、とてつもなくしっかり表現されています。素晴らし過ぎる。本当にありがとうございます。
若き天才監督:斎藤圭一郎氏が魅せる「静と動」
まだ30歳というお若い監督のようです。が、すでに老練さすら感じさせる「足し算と引き算の美学」のようなものを、ご自身の中に持っていらっしゃるような印象を受けました。どんな人なのでしょうか、多分まともじゃない(良い意味)と思われます。ちょっと別のステージにいる人、と言った方が近いかも知れません。インタビューなどを読んだことは一切ないのですが、「僕はこうします」と言う芯の強さが作品から感じられて、とても好印象です。きっと優れたディレクターさんなのでは、とも。「ぼっちざろっく」で見せた「飄々としつつも、人の心情を丁寧に描く」と言う卓越したバランス感覚は「葬送のフリーレン」でも健在。音楽の使い方も上手い気がします。さらに本作では、予想以上にハードなバトルシーンも描かれており、ほのぼのとした日常シーンとのコントラストが心地よい。斎藤監督、これからのご活躍が非常に楽しみです。新世代のディレクターが登場した感じが、たまらなく素晴らしいですね。本当にありがとうございます。
原作漫画への尊敬の深さと、アニメならではの見せ方の両立
私はアニメをきっかけに原作を読んだ派です。存じ上げず失礼しました。漫画もめちゃくちゃ面白かったです。一気に読破してしまいました。テーマは「コミュニケーション」だと思うのですが、物語の構造、ツール、アプローチのどれもが非常に面白いです。
よくある「異世界もの」と言う舞台でありながら、そこに比重は置かず。さらに「魔法もの」でありながら、設定や技術に比重を割かれてしまうことも無い。世界や魔法などは、あくまで「テーマを表現するためのツール」として控えめに用いつつ、「人と人のコミュニケーション」を「過去への後悔」と言うアプローチの上に載せて描いています。物語の構造として、上手いなぁと感じました。悪く言えば「後出しで色々なエピソードを出して感動させられる」のですが、作品の至る所に「事前に練られた数多くのエピソードが準備されており、それらが現在進行する話の上に少しずつ織り交ぜられている」工夫が感じられます。その織り交ぜ具合が、非常に素晴らしい。アニメ作品では、ちょっと見たことが無いタイプの物語な気がします。例えば、ONE PIECE のように「ドーン!!!」とした感動が来るのではなく(それはそれで好き)、「葬送のフリーレン」は「ホッカイロのように、後からじんわり湧き上がる」ような感動を内包しています。小説など文学作品のような味わいです。物語も優しい、登場人物も優しい、演出も優しい。全てが優しい世界です。もちろん、その優しさを際立たせるための対比の要素もあるのですが、程よい塩梅で調整されています。その調整具合が、漫画とアニメで最も異なるポイントであり、異なるからこそ、それぞれの面白さが際立つのでしょう。
原作とアニメの違いとして、最もわかりやすいのは「戦闘シーンの描き方」です。これは明確、明快で良いですね。漫画にとって戦闘は「物語の一要素」として割り切って(ページを割かず)淡々と描かれていますが、アニメでは「戦闘こそアニメーションの華!」と言う熱いテンションで描かれています。フェルンが攻撃魔法を連射する際の「髪の毛が複雑に舞う様子」なんてもう、アニメーターの芸術的な性癖を見せつけられているかのようで、眼福の極みでした。第10話のアウラとフリーレンの戦闘は、アニメ史に残る名エピソードになったと思っています。アニメ製作サイドが相当に原作を読み込み、その魅力を分析した結果だと思われます。「漫画は漫画で良い、アニメもアニメで良い」と言う結果を求めることは、極めて難しいものです。漫画を購読している既存のファンを大切にしつつ、アニメから入ってくる新規のファンも獲得すること。普通は無理だと思います。近年はアニメ化で成功する作品が多い印象ですが、「葬送のフリーレン」はアニメ化して大成功した作品として語り継がれて良いのでは、と思っています。素晴らしい製作チームです。本当にありがとうございます。
「耳から至福:豪華過ぎる声優陣&豪華過ぎるEvanCall」と言う内容も書こうと思っていたのですが、あっという間にそこそこの文章量になってしまったので、今日はこのへんで。ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。
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